【ルート紹介】小川山 烏帽子岩左稜線

【ルート紹介】小川山 烏帽子岩左稜線

2023年1月18日

小川山にあるマルチピッチルートの中でも、かなりのロングルート。スラブ・フェイス・リッジ・クラック・ワイドクラックと、とても豊かな表情をみせる好ルートです。クラックやフェイスのテクニックを覚えたら、是非マルチピッチ経験者と一緒に楽しんで欲しいルートです。 

アプローチ

廻り目平キャンプ場から林道を上流へ。車止めのチェーンをまたいで数十メートルで、左の川岸へ行く踏み跡に入る。川は増水していなければ飛び石伝いに渡れるが、そうでなければ靴を脱いで裸足で渡ることになる。対岸へ渡ったら右の方から森の奥へのびている明瞭な踏み跡をたどる。しばらくいくと、T字路に着く。左へ行けば人気エリアのマラ岩・妹岩方面。これを右に折れる。しばらく踏み跡を歩くと顕著なケルンがあるので、そこで左に折れる。そこからガレ場をしばらく上がる。廻り目平や西股沢が遠く眼下に見下ろせるようになる頃、ガレ場の踏み跡は右の森の中へ折れていく。そこからまもなく岩場の基部に出る。ここが1ピッチ目の始まりだ。キャンプ場から取付きまでおよそ50分。

ルートガイド

1ピッチ目。出だしはいつも岩が湿っていて、少し気持ち悪い。大きな木の根を掴んだりしながら慎重に登る。20mでテラスに出る。

2ピッチ目。ここでピッチを切っても良いが、まだまだ余裕があるので、上の2ピッチ目を繋げて登る。ここはウォーミングアップにちょうど良い難しさだ。大きな木のあるテラスでピッチを切る。

3ピッチ目。少し左側からクラックを辿り、バンド伝いに右上へ斜上していく。

4ピッチ目。ルート前半の核心部だ。5.7とグレードは低いが、1か所思い切りの必要な場所がある。核心部付近には残置ピトンが何本か打たれいているので、効いているかどうかをチェックしたうえで、全てのピトンに支点を取ろう。思い切ったムーブをこなせば、すぐに傾斜は緩くなり、まもなく位牌岩のピナクル頂上に立つ。

5ピッチ目。リッジ歩き

6ピッチ目。カンテ左側から登っていく。易しいが岩が少々脆いので、注意しながら登る。まだロープを伸ばせるからといって伸ばしすぎると、ロープの摩擦で全然動けなくなるので、早めに立ち木でピッチを切る。

7ピッチ目。カムと残置ピトンを使いながら、一番岩の硬い所を登っていく。

8ピッチ目。度胸試しのピッチ。レッジから左へトラバースするのだが、1ムーブが怖くてなかなか度胸がいる。しかし実際には、思い切りよく体を宙に降りだせば、すぐに次のホールドに届き、安心感が得られる。リッジに這い上がって適当な場所でピッチを切る。

9ピッチ目。リッジ。

10ピッチ目。左のリッジ状から登れば5.4でとても易しいが、クラックの経験を活かすなら、目の前の美しいハンドクラック(5.7)に是非とも挑もう。これを登りつめた岩峰が三ノ楯だ。

11ピッチ目。懸垂下降1ピッチ(30m)。一部バランスの悪い場所があるので、慎重に下降する。

12ピッチ目。四ノ楯付近のアップダウン。少しルートが中だるみになる。もう一度短い懸垂下降がある。

13ピッチ目。易しく快調に50m登る。

14ピッチ目。最後の城塞。ワイドクラック(5.8)が待ち構えている。クラックの途中に数か所、残置ピトンのみでも登れるが、大きなカムもあるととても安心。ザックを背負ったままだと非常に登りづらいので、120㎝以上のスリングにザックをぶら下げ、ハーネスのビレイループに吊るして登る。クラックに対して左向きで登るか右向きで登るか。色々試して最適解を見つけられたい。ワイドクラックを登り切ると、ルートの終了点である五ノ楯に出る。

下降

五ノ楯から裏側に踏み跡があるので、これを歩いて降りる。下降はすべて徒歩での移動になるので、五の楯でクライミング装備を解除して問題ない。踏み跡を辿れば1時間弱でキャンプ場まで戻れる。

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↑4ピッチ目、位牌岩へ出る直前付近。

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↑位牌岩を越えてからの易しいリッジ。

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↑途中こんな森歩きも。

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↑最後のワイドクラックをどう攻略するか。

テクニカルアドバイス

総じて残置支点は少ないので、確実なナチュラルプロテクションのセット技術が必要です。

初見ではルートファインディングに時間を要する可能性があるので、できるだけ朝は早く出る方がよいでしょう。

2名パーティならシングルロープで十分ですが、懸垂下降のことを考えると、60mの長さはあった方が無難です。または50mダブルロープ使用がお勧め。

小川山のショートルートに比べると、部分的に岩が脆いです。十分注意して登る必要があります。

エスケープ

  1. 四ノ楯に向かって1度懸垂下降し、最低コルから右側にさらに15mの懸垂下降をすれば地面に降りられる。
  2. 60mダブルロープを持っていれば、三ノ楯頂上から西壁を1ピッチの垂直な懸垂下降で終えられる。ただし懸垂下降支点へのトラバースは露出感があるので、絶対に落ちられません。