アルピニスト養成アカデミー2020年研修の最後は、4泊5日行程の南アルプス聖岳東尾根というバリエーションルートの完全踏破を目指して、12月25日から入山しました。
日程: 2020年12月25日~29日(プラス予備日程1日)
メンバー: 講師 山田 受講生1名
午前7時40分に静岡駅にて集合。それから車で2時間40分もの長い時間、山道を走る。
11時前に沼平ゲート駐車場に到着し、装備の最終点検を行った後、11時30分に車をあとにする。
林道を歩くこと3時間、ようやく14㎞を歩ききり、15:30に新聖沢橋に到着。聖沢登山口はこの先20分の所にあるが、本日は水にお心配のない、聖沢の川原に降りてビバークすることにした。寝る前の気温-5℃。
日の出より1時間前から歩き始め、聖沢登山口へ。そこからしばらくは聖沢登山道を登っていく。
2018年・2019年の台風の影響なのか、登山道はかなり荒れている。「これが一般登山道??」と首をかしげてしまうような危険な場所もある。とくに土砂崩れの跡を大きく迂回する場所は、急斜面で手掛かりも乏しいため、慎重な行動が必要だ。
通常なら出会所小屋跡付近より東尾根に取付くが、道が整備しなおしてあり、「上に登ると東尾根です。」という明確な標識のところから東尾根に取付いた。この先は踏み跡や目印が割とはっきりしており、歩きやすかった。途中にスチールワイヤーが散乱している箇所を通り越して、ジャンクションピーク(2,250m)にあがる。そして最後の急坂を400m上げて、白蓬の頭に到着。時刻15:30。
5:50にテントを撤収して、この山行のメインディッシュである東尾根核心部を目指す。6時50分頃東の空が明るくなり、朝日が昇ってきた。
ナイフリッジに出るころから、赤石沢方向からの風が猛烈に吹き付けてきた。時々止まっては耐風姿勢をとり、慎重に歩を進める。
そして見えてきたのはこのルートの核心部である、奥聖岳への登りだ。
相変わらず横殴りの風に翻弄される。重荷でバランスを崩しやすいので注意深く行動する必要がある。所によってロープで結びあって行動した。
核心部は山慣れしている人にとっては難しくはないが、風に飛ばされないように登らなければならない。
重荷に喘ぎながらも、ついに奥聖岳のナイフリッジを登り切った。
奥聖と聖岳の間の風下で少し休んでから、最後の登りに入る。相横殴りの強風は止まない。
11:36 聖岳山頂に到着。
三日間の苦闘の末にたどり着いた山頂は生徒さんも私も嬉しくて仕方がない。固い握手をかわしてからすぐに下山にかかった。
聖岳の南斜面は雪が飛ばされてほとんどない。アイゼンを付けたり外したりしながら聖平小屋へ向かっていく。途中際どいトラバースがあるので、そこは要注意だ。樹林帯まで降りてきた後は、慣性の法則に従って小屋まで下った。
15:45 聖平小屋
当初の予定では、聖から上河内岳・茶臼岳へと縦走してから戻る予定であったが、28日は天候が荒れる予報であったことと、残りの体力を鑑みて、聖沢登山道を下ることにした。ここは積雪期は雪崩の巣なのでお勧めできない。
この日は下山だけなので、風雪の中生徒さんに先頭を歩いてもらい、ナビゲーションをしながら下っていった。
出会所小屋跡にて休憩したのち、26日に通過した登山道下部に合流した。行きは雪がなく路面が乾いていたのでなんということはなかったが、この日は雪が積もって足場が非常に悪くなっており、難儀した。すべての体力を使い切ったころ、聖沢登山口に降り立った。15:52。
登山は終わったのだが、林道歩き14㎞が待っている。なんてことはないのだが、これが疲れた体にはひどく堪える。二人ともフラフラしながらバカ話を織り交ぜて、ひたすら歩く。
そして午前9時半、待望の沼平駐車場に無事帰還。長い長い旅が終わった。
シングルロープ8.6㎜×50m 1本
ヌンチャク2本
スリング60㎝2本
スリング120㎝4本
簡易ハーネス
ヘルメット
アイスアックス1本(各自)
アイゼン
アルピニスト養成アカデミーを開校して4年目の年末山行でした。3年連続で色々な山で途中敗退を繰り返していたので、登頂ができたことはとても嬉しいことでした。生徒さんも事前に歩荷トレーニングをされたり、結構用意周到に登りました。
例年より雪は少なかったのですが、28日には南岸低気圧が通過したため、一晩で雪景色になっていました。色んな表情の山を見ることができました。
東尾根の核心部は、岩稜歩きに慣れている人であればロープは要らないかもしれませんが、念のため携行した方が無難だと思います。1歩ミスれば奈落の底ですから。
白蓬の頭(およそ2,600m)での朝晩の気温はおよそ-11℃でした。それなりに寒い環境です。凍傷、強風による転滑落、道迷いなどに十分な注意が必要なルートです。